出費が重なってお財布がピンチ!どうにか安全に、低金利でお金を借りたいと思った時に利用してほしいのが従業員貸付制度です。
お金を借りる方法としては、銀行や消費者金融が先に浮かぶかもしれませんが、借りる理由によっては会社の制度を利用できる場合があります。
ただし、従業員貸付制度は誰でも利用できるわけではありません。今回は、従業員貸付制度を利用できる条件や手続き方法などについて詳しく解説します。
従業員貸付制度は社内での独自の審査はありますが、信用情報への照会などは行われません。つまりいわゆるブラックでも借りれるところというわけです。
しかし、社内の人に借入がバレてしまうなどのリスクはあります。
従業員貸付制度のメリットとデメリットについてもお話ししますので、他のローンと比べてどちらが良いか、よく比較検討してみてください。
会社にお金を借りる方法〜従業員貸付制度の基本を解説
従業員貸付制度とは、会社からお金を借りられる制度で、福利厚生の一環として導入されています。
「社内貸付」と呼ばれることもあります。貸付条件などは就業規則で定められています。
従業員貸付制度と給料の前借りとの違い
従業員貸付制度は福利厚生の一つですので、借りるには条件があります。また、会社から借りるのものなので、原資は会社の資本です。
それに対して給料の前借りとは、自分が働いた分のお給料のうち、まだ受け取っていないお給料を給料日よりも前に払ってもらうことをいいます。
正確には「給料の前払い」といい、労働基準法第二十五条でそのルールが定められています。緊急の理由があれば、会社は給料の前払いに応じなければなりません。
(非常時払)
第二十五条 使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。
引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索
利用限度額は勤続年収や収入によって変わる
いくら借りられるかは就業規則に定められていますが、一般的には勤続年数や年収によって変わります。
長く勤めている人、年収の多い人の方が多く借りられる仕組みになっており、総量規制の対象外となっていますので、人によっては高額な融資が受けられる可能性もあります。
借りたお金の使い道が限定されている
会社から借りたお金は、使い道が限定されています。あくまでも緊急の理由がある時にしか使えないお金ですので、レジャーや遊興費、ギャンブル、生活費などには使えません。
- 冠婚葬祭
- 病気や怪我の治療費
- 災害による被害
などやむを得ない事情で、急にお金が必要になった場合に限られます。
無利息では借りられないが一般的なローンよりは金利が低め
従業員貸付制度の金利は、2.0%〜4.0%と非常に低いのが特徴です。カードローンは15.0%〜18.0%であることを考えると、かなり低いことがわかります。
(1) 会社が他から借り入れて貸し付けた場合:その借入金の利率
(2) その他の場合:貸付けを行った日の属する年に応じた次に掲げる利率
・平成22年から25年中に貸付けを行ったもの:4.3パーセント
・平成26年中に貸付けを行ったもの:1.9パーセント
・平成27年から28年中に貸付けを行ったもの:1.8パーセント
・平成29年中に貸付けを行ったもの:1.7パーセント
・平成30年から令和2年中に貸付けを行ったもの:1.6パーセント
・令和3年中に貸付けを行ったもの:1.0パーセント
・令和4年から令和5年中に貸付けを行ったもの:0.9パーセント
引用元:No.2606 金銭を貸し付けたとき|国税庁
会社が貸すのだから無利息にはできないのか?と思われそうですが、所得税の関係で無利息にはできないのです。
本来、お金を貸したら利息を取らなくてはなりませんが、無利息にしてしまうと「経済的な利益」を受けたとして贈与とみなされ、給与に課税されてしまうからです。
従業員貸付制度に限らず、無利息でお金を貸すと贈与税の対象となりますので、注意が必要です。
返済方法は給与から天引きが一般的
会社によって返済方法は違うものの、一般的には給与からの天引きとなります。
生活に支障のない範囲で返済額が決められていますし、わざわざ銀行などに出向いて返済する必要がないのも嬉しいところです。
天引きであれば基本的に返済できないということはないはずですが、口座振替となっている場合は注意が必要です。
うっかり残高不足で返済できないことが重なると、昇進に影響する可能性もあります。
転職などで退職する予定のある人は、あまり高額な借入をしない方が賢明です。
従業員貸付制度を利用できる条件
従業員貸付制度は、一定の条件を満たした社員のみが利用できる制度です。誰でも利用できるわけではないため、条件を事前に確認しましょう。
利用できるのは正社員のみとしている会社が多い
契約社員やパート、アルバイトも利用できる福利厚生はあるものの、従業員貸付制度については正社員のみとしている会社が多いです。
正社員であれば毎月の給与額が一定であり返済しやすいことと、突然辞めるリスクも少ないためです。
ただ、小さい会社ですと、雇用形態に関わらず利用できる場合もありますので、まずは就業規則を確認してみましょう。
また、先ほどお話しした給料の前払い(非常時払い)であれば、雇用形態に関わらず利用できます。非常時払いは労働者の権利であり、緊急時の対応だからです。
勤務態度が良好であること
会社の資金から融資するため、返済が滞ると会社の損失になってしまいます。
ですから、確実に返済してもらえるよう、勤務態度などに問題がなく、勤続年数が長い人が融資の対象となっています。
勤続年数の長い人の方が審査は有利
正社員であれば基本的に誰でも利用できる制度ですが、会社によっては「勤続○年以上」と条件をつけている場合があります。
働いている期間が長ければ収入が安定しており、また、これまでの勤務実績からその人の人事評価などを審査しやすいからです。
入社してまだ日が浅い場合は利用できないこともありますので、就業規則を確認してみてください。
会社からお金を借りるときの手続きの流れ
従業員貸付制度を利用する方法について説明します。詳細は会社ごとに異なりますが、一般的にはこのような流れとなっています。
- 上司に許可をもらったうえで経理担当に申し出る
- 申し込み用紙など必要書類を提出する
- 審査を受ける
- 融資(振込)
必要書類と印鑑
申込書のほかに、見積書などが必要となります。
従業員貸付制度では借りたお金の使い道が限定されていますので、何にいくら必要なのか、見積書や領収書の提出を求められることがありますので、用意しておきましょう。
社内審査を受ける
社内審査では、勤続年数やこれまでの勤務状況、日頃の勤務態度などが審査されます。
給与の額はわかっていますので、返済能力というよりは、人柄を見る審査といっても良いでしょう。
勤務態度や人事評価に問題がなく、普通に仕事をしている人であれば審査通過は難しくないはずです。
金銭貸借契約書を提出する
審査を通過すると、会社と金銭貸借契約書をかわします。
- 貸付の日時
- 貸付金額
- 返済方法
- 返済期日
などについて書かれています。借用書と同じだと思えば良いでしょう。
会社にお金を借りることのメリット
会社にお金を借りるのは、カードローンと比べると審査も甘く、金利も低いというメリットがあります。
カードローンよりは審査が甘い
従業員貸付制度は利益を目的としていません。社員が困った時のための福利厚生の一環であり、審査は同じ社員が行います。
ですから、ギャンブルにハマって抜け出せなくなっているとか、借金まみれになって生活が苦しくなっているなどお金を貸さない方が良い事情などがなく、勤務態度に問題がなければ審査は通ります。
信用情報は審査されない
信用情報は信用情報機関に加盟している企業や金融機関しか照会することはできないので、従業員貸付制度のために審査されることはありません。
ですので、信用情報に問題があったとしても、社内の審査に影響はないですし、ブラックであることが会社にバレることもないでしょう。
また、社内貸付制度を利用しているという記録が、信用情報機関に残ることもありません。他のローンを利用する場合も、会社からお金を借りていることが影響するとは考えにくいです。
参考:指定信用情報機関のCIC
金利が低いので利息の支払いを抑えられる
最初に説明した通り、金利は非常に低いです。従業員貸付制度は利益を目的としておらず、従業員の救済が目的だからです。
消費者金融カードローンと比べると10.0%以上も低いので、その分返済は楽になります。
会社にお金を借りることのデメリット
金利が低くて信用情報機関とも関係がない社内貸付制度ですが、デメリットもあります。
生活費やレジャー費には使えない
借りたお金は生活費には使えません。会社側からすれば、生活できるだけのお金を毎月支払っていますし、生活費が足りないからといってお金を貸す行為を繰り返せば借金が常態化する恐れもあります。
返済できなくなる可能性も高く、福利厚生の一環として行っている貸付を、生活費が足りなくなるような人に利用させることはできません。
もちろん、借金やローンの返済に充てることもできません。嘘をついてお金を借り、それがバレた時には人事評価に影響する可能性もあります。
融資まで時間がかかる
カードローンのように、即日融資とはいきません。振り込みまでは2〜3週間、もしくはそれ以上の時間がかかるでしょう。
全ての会社の従業員貸付制度があるわけではない
従業員貸付制度は、すべての企業で導入されているわけではありません。利用したくても、そもそも制度が導入されていない会社では融資を受けられません。
ある程度の資金力がないとできない福利厚生なので、中小企業では導入されていないところも多いです。
連帯保証人が必要
会社としても貸し倒れは防ぎたいので、連帯保証人が必要です。
連帯保証人になるのは親や親戚で構いませんが、誰にもお願いできない場合は借りられない可能性が高いです。
もしどうしても連帯保証人を見つけられない場合は、金利は高くなるものの、無担保・無保証人で借りられるカードローンなどを検討することをおすすめします。
周囲の人にバレる可能性が高い
従業員貸付制度の審査は会社の人が行っています。
上司に申請の許可ももらいますし、会社の人たちが関係している以上、借入をしたことが周囲にバレてしまう可能性は高いでしょう。
正当な理由があって融資を受けるなら何ら問題はありませんが、借入をしたことについて心ないことをいう人がいる可能性は考慮しておいてください。
会社にお金を借りるときの注意点
手続きはそれほど煩雑ではありません。用意された申込書に記入して提出するだけです。
問題は、借りた後のことです。以下の点に注意してください。
返済できなくなった場合
給料から天引きされる場合には、返済できなくなるということはありません。返済できなくなるとすれば、口座振替を利用しているときです。
残高不足で返済できない時は、会社に早めに相談しましょう。返済できないと、融資が会社からの贈与とみなされ、課税対象となる可能性があるからです。
返済中に退職するときは一括返済
借りる時は予定していなかったとしても、その後の状況の変化によって転職することになった、という人もいると思います。
返済が済んでいない段階で退職する場合は、未返済分を一括返納する必要があります。
もし、将来的に退職する可能性がある人は、一括返済できる金額にしておくことをおすすめします。
会社にお金を借りる〜給料の前借り(前払い)について
最初に説明した通り、従業員貸付制度と給料の前借りは違います。
従業員貸付制度は融資、給料の前借りはすでに働いた分について給料日よりも前に支払ってもらうことです。
働いていない分について払ってもらうことはできない
たとえば、毎月のお給料日が25日だとして、20日に給料を受け取りたいとします。請求できるのは、1日〜20日までのすでに働いた分だけです。
まだ働いていない分について、先取りすることはできません。
勤務実績のない日の分を先払いしてしまうと、先払いした分の労働を強制することになるからです。
強制労働は労働基準法だけでなく、職業選択の自由を保障している憲法にも違反します。
雇用形態にかかわらず利用できる
従業員貸付制度は正社員しか利用できないことが多いですが、給料の前借りについては働いた分を前払いしてもらうだけなので、雇用形態は関係ありません。
契約社員、パート、アルバイトでも利用可能です。
前借りは直属の上司に正直に相談する
前借りできるのは、あくまでも緊急の理由がある時のみです。
- 生活費が足りない
- 遊ぶお金が欲しい
- 旅行に行きたい
などの理由は認められません。
急病や出産、災害にあったなど緊急でお金が必要になった場合だけですので、その理由を正直に上司に伝えましょう。
前借りには利息がつかない
前借りといっても、すでに働いた分について早めに払ってもらうだけですので、利息はかかりません。
これは従業員貸付制度とは大きく異なる点です。
給料との相殺はできない
前借りした分は、原則として給料から天引きはできません。
たとえばお給料が20万円で、15万円を先に払ってもらったとします。次のお給料日にはいつも通り20万円払ってもらい、その後に15万円を返済します。
先に払った分を差し引いて、5万円とはならないのです。
これは、労働基準法第17条で相殺が禁止されているためです。
(前借金相殺の禁止)
第十七条 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。
引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索
給料は全額払いが基本ですので、労働させることを基本とする相殺はできません。
なお、従業員貸付制度で給料から天引きするのは、合意があるからです。労使協定があり、就業規則にも明記されていれば問題ないということです。
会社にお金を借りることに関するよくある質問とその回答(Q&A)
会社にお金を借りる従業員貸付制度について、よくある疑問、質問とその答えについてまとめました。
従業員貸付制度とはなんですか?
従業員貸付制度とは、会社の資金から従業員に融資をしてくれる制度で、福利厚生の一つとして導入されている制度です。
誰でも借りられるわけではなく、正社員に限定しているところが多いです。また、勤続年数などの条件がある場合もあり、詳しいことは就業規則を確認するとわかります。
会社にお金を借りることはできますか?
会社が従業員貸付制度を導入していれば借りることができます。どの会社にもあるわけではないので、総務担当に確認するか、就業規則を見てみてください。
会社からいくらまでお金を借りられますか?
給与の額や勤続年数によって借りられる金額は違ってきます。審査の基準や貸付額についても、それぞれの会社で独自の基準が定められています。
一般的には年収が高いほど融資額も高くなりますが、上限額はそれほど高くなく、100万円程度が上限でしょう。
借りる目的に合わせて設定されますので、自分が好きな金額を借りられるわけではないことに注意が必要です。その目的にあわせて必要な金額しか借りられません。
会社にお金を借りるときの金利はどのくらいですか?
借りた時期によって変わってきますが、およそ2.0%〜4.0%とカードローンと比べると非常に低いです。
一般的なカードローンよりも10.0%以上も金利が低いので、借りる目的が決まっていて、審査に時間がかかっても大丈夫な人は、会社にお金を借りると利息の支払いを抑えられます。
会社にお金を借りる手続き方法は?
会社によって違いはありますが、一般的にはこのような流れで進みます。
- 上司に許可を取る
- 総務・経理担当に話をして申請書をもらう
- 申請書とともに必要書類を提出する
- 審査
- 融資
審査には2〜3週間、もしくはそれ以上かかる場合があります。
会社に借りたお金はどのくらいで返済すれば良いですか?
返済方法は給与から天引きか、口座振替になると思います。どのくらい借りるか、1回に返済する金額によって返済期間は変わってきます。
生活に支障がないように、1回の返済金額はそれほど大きくないはずですので、あまり高額な融資を受けると返済期間が長くなってしまいます。
いくら金利が低いといっても、返済期間が延びればそれだけ利息の支払いが多くなりますので、返済期間とのバランスも考えて融資を受けましょう。
会社にお金を借りて返せないとどうなりますか?
給料から天引きされている場合は、返せないということがあり得ません。ですので、万が一そのような事態になるかもしれないと心配な人は、口座振替ではなく、天引きにしておくことをおすすめします。
口座振替にしたものの返済が厳しくなったという場合には、早めに担当部署に相談します。
もしも返済できなくなってしまうと、会社からの「贈与」とみなされ、所得税を課される可能性があります。
会社にお金を借りると昇進に響きますか?
昇進への影響がまったくないかというと、そうとは言い切れないところです。
毎月お給料を払っているのにお金が足りなくなる人と、堅実に貯蓄をして万が一に備えている人とでは、おのずと評価が違ってくるはずです。
とはいえ、やむを得ない事情で財政的にピンチになる可能性は誰でもあります。
たとえば不慮の事故や自然災害などその人の責任ではないことで出費が重なってしまったなど、事情によっては、仕方のないことだと周囲も納得してくれるでしょう。
それでも、昇進にひびくのではないかと不安な人は、従業員貸付制度以外の方法を検討した方が良いかもしれません。
ブラックリストでも借りられますか?
従業員貸付制度では、日頃の勤務態度などが審査の対象となり、信用情報の確認は行われません。
ですので、仮にブラックだとしても、それが会社にバレて融資が受けられないということはないでしょう。
ただし、ブラックの人は日頃からお金にだらしないという印象を持たれている可能性もあります。
そのような人が会社からもお金を借りようとすることは、今後の昇進や人事評価に悪影響を及ぼす可能性はゼロではありません。
また、従業員貸付制度は借金の返済のためには利用できませんので、もし今現在ブラックであるならば、ブラック状態を解消することを優先させましょう。
会社にお金を借りる従業員貸付制度は利用できる人が限られている
会社にお金を借りる従業員貸付制度は、福利厚生の一環として導入されている場合があります。
全ての会社に導入されているわけではないので、就業規則を確認してみてください。
また、一般的に利用できるのは正社員に限られています。パートやアルバイトは利用できないことが多いため、これも就業規則を確認してみましょう。
金利は2.0%〜4.0%と非常に低いのが特徴ですが、使い道が限定されており、審査にも時間がかかります。融資まで2〜3週間はかかりますので、急いでいる人にはあまり向いていない方法です。
使う目的が決まっており、できるだけ低い金利で必要な分だけお金を借りたいという人は、検討してみてください。